HOME  >  WORLD LIVING  >  ベルリンへ、夏の旅|WORLD LIVING ロンドン編 vol.16

ベルリンへ、夏の旅

宮田華子 
ロンドン在住ライター。メディア製作会社に勤務後、2011年からフリーランスのライターに。デザイン、アート、建築、クラフト等を得意とし、文化&社会問題について日本の媒体に執筆。編集ユニット「matka」として、ウェブマガジンも運営している。2015年にロンドンで小さなフラット(マンション)を購入。日本とは異なる一筋縄でいかない「イギリス・家事情」に翻弄される日々を送っている。 
ウェブ:http://matka-cr.com/ 
インスタグラム:https://www.instagram.com/hanako_london_matka/

例年通りも涼しい初夏から始まった今年の夏。しかし7月末の突然の記録的酷暑→例年通りの涼しい夏リターンズ→最後のあがきの猛暑(8月末)と気温のアップダウンが激しい夏でした。

前回も書きましたが、我が家にはクーラーがありません(って、どの家にもないんですが)。室内温度30度越えの日も多く、パソコンを打つ指さえも汗ばむ日が多かったです。

しかし9月に入りドーンと気温が下がりました。猛暑だった日々を忘れそうなほど、朝晩はヒンヤリしています。

アイスティー

今夏に飲みまくったキンキン冷え冷え、オリジナルブレンド・水出しアイスティー。麦茶のようにがぶ飲みして猛暑日をしのぎました。

あっという間に秋から冬に突入してしまいそうな気配ですが…私の心はいまだに夏の思い出を噛み締めている最中なのです。

今年、久々に夏に旅行に行きました。その時撮影した膨大な写真を整理しつつ、楽しかった出来事をぼんやり思い出すのが最近の至福の時間です。

行先はベルリン(ドイツ)。私にとって、9年ぶりのベルリンでした。

イギリス人にとって6~8月はホリデーの季節。この時期に有休をガツンと取って長~い旅行に行く人がほとんどです。しかし我が家は日本人夫婦なので、長い休みは日本への一時帰国にとっておきたいこと、そして「2人が同じ時期に休みを取る」調整がかなり難しい等の理由で、夏休みは毎年控えめにしてきました。そういう在外日本人は、まあまあ多いと思います。

しかし今回まさに「天から降ってきた」ようなきっかけがあり、所用と仕事少々もくっつけて数日間のベルリン旅行が実現しました。

メトロポリス

ツォー駅の近くで撮影。以前はなかった建物がたくさん立っていました。まるで映画『メトロポリス』の世界。

ベルリンは思い出の街

少しだけ、私の「センチメンタル・過去話」にお付き合いください。実は私にはベルリンに強い思い入れがあります。数年前にフリーランスになるまでずっとロンドンで会社員をしていたのですが、毎年2月、真冬のベルリンに長めに出張していた時期がありました。

初めてベルリンに行ったのは15年以上前。その時が人生初の1人海外出張でした。

ロンドンから行ったのでフライトは2時間ぐらい。当時すでにLCCが一般的だったので、イギリス在住者にとってベルリンは精神的には近い場所です。しかしベルリンについての知識ゼロ状態の私にとって、ベルリンは「遠い、誰も&何も知らない街」でした。

当時はGoogle mapなんてものはなく、ドイツ人の友人に空港から中心部までの行き方を聞き、高いお金を出してロンドンの本屋さんでベルリンの地図を買いました(到着してしまえば、駅で無料で配布されているレベルのものです)。そしてとてつもなく心細く、そしてドキドキしながら極寒のベルリン・ティーゲル空港に降りた日のことを今もよく覚えています。

古い写真2004年

古い写真を掘り起こしてみました。2004年2月8日に、映画『ベルリン 天使の詩』で知られる天使の塔が遠くに見えます。この風景は今もあまり変わらないのですが、寒々しい写真なので選んでみました。この塔は旧西ベルリン側にありますが、その向こうに旧東側にあるテレビ塔がうっすら見えます。

しかしその後、たった1日で魔法にかかったようにベルリンに魅了されてしまいました。東西ベルリンが存在していたことを物語る街並み、骨太だったり幾何学的だったりする建築物、広く、細部までしっかりと作られたインテリア等、「この街のデザイン、私、大好きだ」と一瞬でファンになってしまったのです。

テレビ塔

今回撮影したテレビ塔周辺。このエリアは建物そのものはあまり変わっていませんでした。

以来、毎年行くたびに「いつか住めたらな」と思うぐらいベルリン愛は深まっていきました。出張することがなくなったもののすでに精神的な距離は近くなっていたので「またすぐ行ける」ぐらいに思っていたのですが…なんと9年もの年月が過ぎ去っていたのです。

履きなれたはずの靴なのに、何と靴擦れしてしまってビックリした程歩きまわった今回のベルリン旅。いわゆる観光名所にはそんなに行っていないのですが、たくさんの刺激と感銘を受けすぎて書きたいことが多すぎます! その気持ちを抑えつつ、絞りに絞って特に印象深かったポイントを3点について書いてみます。

① 「過去を絶対に忘れない」― 街に息づく決意

今回1番強烈に感じたのはこの点でした。ベルリンを何気なく歩くだけで、この街がたどった過去が分かるよう、モニュメントや説明用のプレートがほんとうにたくさん立っています。

壁面

何気なく通りかかった道でしたが、遊歩道が「展示スペース」になっていました。金属柱には、文字や写真だけでなく、なんと動画用ディスプレーも埋め込まれていて、映像も見られるのです。

オブジェ

金属製の近隣のジオラマ。上から地域を見ることで、どんな風に壁が建てられていたのかが分かります。

以前から史跡はたくさんあったものの、9年前と比較するとぐんと増え、また見やすく・発見しやすくなっていました。

ユダヤメモリアル

「虐殺されたヨーロッパのユダヤ人のための記念碑」。人々が腰かけておしゃべりしたり、子供が飛び石をして遊んでいました。そんな風にして歴史を知ることができる場所です。

「モニュメントです」と謳ったものだけではありません。例えば、歩き疲れて建物前の階段に腰を下ろしたときに、足元に埋め込まれた小さなプレートが目に入りました。

足元

ドイツ語が読めないので「これって、ここの地名かな?」と思ったのですが、スマホの翻訳アプリをかざすと「ベルリンの壁」と出てきてドキリとしました。

ここに壁が立っていた―― 独特の臨場感が足元のプレートから伝わってきます。

そして町中にこんな↓プレートが埋め込まれていることも知りました。

足元2

1度気づくと、街のあちこちで簡単に見つかります。

これは「つまづきの石」と呼ばれるもので、金属板に名が刻まれた人(ユダヤ人)がここに住んでいたという証です。1993年から、ナチズムの歴史を風化させないためにケルンで始まったプロジェクトだそうです(コチラの記事に詳しく紹介されています)。

ベルリンの壁

ホテルは「イーストサイド・ギャラリー(ベルリンの壁跡)」のすぐ近くでした。この壁画は最も有名なものの1つ。1979年にドイツ民主共和国(東ドイツ)の建国30周年記念を祝う式典で撮られた、ソ連・ブレジネフ書記長と東ドイツ・ホーネッカー議長がキスしている写真を元に、ドミトリー・ヴルーベリによって1990年に描かれました。観光客にとって大人気の記念撮影場所になっています。 

歴史を知るためのミュージアムももちろん充実しています。今回いくつか行きましたが、最も鮮烈な印象を受けたのは「ベルリン・ユダヤ博物館」です。

2001年に開館。ユダヤの歴史を思わせる、切り傷のような装飾がある建物外観写真はコチラから。素晴らしい建物の全体像が見られます。

ドイツにおけるユダヤ人の歴史、そして現在の暮らしについて数多く展示しているこの博物館。新館と旧館を繋ぐ地下の廊下兼展示スペース「トンネル」の壁には、ユダヤ人が迫害を逃れるために向かった街の名前が書かれています。

ベルリン・ユダヤ博物館

欧州、北南米だけでなく、アジアの街の名も。

意図的に傾斜をつけている長い廊下。歩くだけで足に負荷が掛かり、そしてその先に光が見えます。光を求めて遠くまで旅立つしかなかったユダヤ人のことを思わずにはいられない構造になっている、と理解し、考えつくされた建物にも感動しました。

迫害されたユダヤ人の遺品が展示されたコーナーで、長い時間かけて説明を読みました。1つ1つの遺品に、異なる物語がつまっています。残された品がたどった道筋が持主の運命を語り、そして見る側を考えさせるのです。この博物館に行くのは実はとても怖かったのですが、本当に行って良かったです。

ベルリンを歩きつつ、今年5月にドイツ・メルケル首相がハーバード大学で行った演説を思い出しました。東ベルリン出身、壁の近くで暮らしていた彼女が、「(今も世界中にある様々な)壁を壊そう」と訴えた、力強い演説です。

日本語訳(全文)はコチラから読めますが、1か所訳に矛盾点が。演説はドイツ語で行われたので英語訳と照らし合わせたところ、「自分に嘘をつきたくなかったので、壁を否定もしませんでした」は「自分に嘘をつきたくなかったので、反体制派の存在を否定もしませんでした」の間違いだと思います。

私はもうすぐEUではなくなるイギリスに住んでいます。ジョンソン英首相はたとえ「合意なき離脱」であっても、絶対に10月末に離脱すると宣言しています。そして私がベルリンを訪れた8月は、日本が終戦した月。戦争についていつも以上に思いを馳せる時期です。

過去への反省と「繰り返さない」という未来への約束を日常の中で残そうとする街。そのことを実感することができて本当に良かったです。

② 散歩でめぐる「アート・デザイン・建築」

この「アート・デザイン・建築」の部分が、ベルリン再訪の1番の楽しみでした。アートの街として知られるベルリンですが、歩きながらしっかり堪能してきました。

ホテル

チェーン系のホテルだったのですが、ロビーのインテリアがデザインホテル風。気持ちが上りました。

ホテルで荷物を下ろし、まず向かったのは大好きな場所「ハッケシェ・ヘーフェ(Hackesche Höfe)」。

ハッケシェ・ヘーフェ

この建物が大好きすぎて、この構図で撮影された写真を使った絵はがきをずっと大切にしていました。「やっと会えたねw」(←笑ってくださる方は…同年代かもしれませんw)

建物名に「ホーフ(Hof、または複数形のHöfe)」がつく場合、中庭がある建物であることを意味します。ハッケシェ・ヘーフェはベルリン・ミッテ地区にある、8つの中庭を持つ複合施設。おしゃれなショップやカフェ等がたくさんあります。

お店を見るのも楽しかったのですが、壁面緑化も素敵で目を奪われました。緑が美しい季節です。

緑化

ハッケシェ・ヘーフェだけでなく、市内いたるところで蔦の絡まる建物や壁面緑化を見かけました。


場所が変われば建物の構造も違うもの。外から眺めても、内に入っても、いちいち細部を見てしまいます。

レンガ

同じレンガ造りの建物でも、窓枠やドア、屋根の装飾、各フロアの高さがイギリスとは違い、面白いです。

こんな「下部だけが斜めに開く」タイプの窓を初めて見ましたが、

窓

このぐらいの空き具合でしたら、1階でも換気したままで外出も可能かも。

窓1つで立ち止まってはかしましく「やいのやいの」言っているわけですから、全然先に進みません(笑)。

街巡りの最中、我が家に連れて帰りたい!と思った素敵なデザイン・グッズにもいろいろ出会いました。

フィルター&フィルター2 (横に並べてもらえたら幸いです)

ドイツ伝統の磁器メーカーKPMのショップで出会ったコーヒー用フィルター。真っ二つに割って内部構造を見せているもの、アイデアですね。

ベルリンにあるバウハウス・アーカイブは現在工事中で2022年まで閉館しているのですが、市内に小さなテンポラリー・ショップにあり、

バウハウス

2階部分では

この2つ↓の前でしばし熟考…(笑)。

エスプレッソ

Pulcinaのエスプレッソマシンと武内経至氏(ミラノ在住)デザインの「Ichendorf」のグラスとカラフェ。なぜかどちらもイタリア製でしたので、「いつかミラノで買えたらいいな」と今回は見送り。

お目当てのギャラリーが「臨時休業」だったりのちょっとがっかりもありましたが、現代アートをじっくりたっぷりみられる美術館に行きたくて、ハンブルク駅現代美術館に行きました。かつて駅だった建物を改築しているので、巨大なスペースをふんだんに使った贅沢な美術館でした。

ハンブルク駅

とにかく天井が高い&広い! 旧駅舎を贅沢に使ったスペース。大きな空間だからこそ、周りを気にせずアートと対峙している感が高まりました。

ハンブルグ駅2

アート映像を鑑賞するコーナー。全員が本気で寛ぎ、寝そべって見ている構図がなかなか面白いです。

ハンブルク駅廊下

廊下の「出口」サイン。文字体と古いスタイルのライトの組み合わせが絶妙。こういう細部の美しさを発見できると、たまらなく嬉しいのです。

まだまだ紹介したいことはたくさんあるのですが、記事がどんどん長くなってます(泣)。涙を呑んで、次に行きます。

③ おしゃれなカフェ天国になっていた

ベルリンカフェ事情はインスタなどでも詳しく検索できるので、ちょっと駆け足で紹介します。

9年前もベルリンはコーヒーがよく飲まれている街でした。チェーン店もあり、美味しいパティスリーもたくさんあり、「外でコーヒーを飲む」文化はしっかり根付いていたのですが、今回は様子がガラリと変わっていました。

いわゆる「サードウェーブ系」のコーヒーを提供し、シンプル&コンテンポラリーな内装で魅せるカフェが本当に増えていたのです。

滞在中天気が良かったので何度もこの手の店に入り、アイスコーヒーを飲みました。どの店もwifiが完備し、長居できる環境が整っています。そして大変混んでいました。

この辺のトレンドはロンドンや東京と似ていますが、ドイツらしい広々感とシンプリシティを楽しみました。各店のコーヒーの味、見せ方、容器の選び方、勉強になることばかりでした。

たくさん立ち寄ったカフェの中から、厳選した2店舗はコチラ↓です。

■The Barn Roaster
https://thebarn.de/

カフェBarn

奥がロースターになっています。ベルリン内だけで大小カフェが9カ所ある人気店。インダストリアル感がある店内には開放感があります。

アイスコーヒー Barn

ほのかな酸味があるストレートのアイスコーヒー。大きな氷が1つ入ってきます。この手の背の低いグラスがドイツでは流行り?なのかもしれません。今回何度も目にしました。

■Bonanza Coffee
https://bonanzacoffee.de

カフェ Bonanza

晴天の日曜日だったこともあり、カウンター前にはずっと列ができていました。

カフェ Bonanza店内

野外席の方が混んでいて、店内にはやや余裕があるのはロンドンと一緒です。

カフェ Bonanzaラテ

深煎りの香ばしいコーヒーで作ったアイスラテ。

必ず何かもらえるのが「旅」

街を歩いては刺激をもらい、カフェでは癒されつつもヒントをもらい、そしてまた歩き出す。そんなことを交互に繰り返し、あっという間のベルリン旅が終わりました。

蚤の市

全然紹介できなかった蚤の市。日曜日を挟んでの旅だったので、何カ所も回りました。こんな感じに何もかもが混ぜこぜに入った段ボールがひたすら並んでる光景は、イギリスの蚤の市ではあまり見ないので面白かったです。見やすく仕訳けられ、きれいに磨かれると値段があがります。でもゴチャゴチャを物色する方がずっと楽しい!

ビール

こちらも紹介しきれなかったのですが、ドイツと言えばビール。もちろんたっぷり飲んできました。こちらは地元ビール「Berliner」。ベルリンのマスコット,クマさんが目印。

クロイツベル

古い建物の錆た感じをうまく使ったバーがたくさんありました。こちらはクロイツベルク地区の「Hopfenreich」。

食事

美味しいモノもたくさん食べました。今どきの「インスタ映え」しそうなドイツ料理も美味しかったのですが、こちらは昔行った思い出の安食堂で食べたソーセージとジャーマンポテト。見えませんがソーセージの下にザワークラウトがたっぷり。ビールに合いすぎて困ります。

この夏は我が家の建物の共同玄関が洪水したり(←いつか書きます。原因は水道管の詰まりだったようです)、熱中症になったり、その他にも息が詰まることが多かったのですが、今回の旅でかなりリフレッシュできました。そして「さて、また仕切り直して頑張りますか」という気持ちになりました。

空

私は「いつも家にいたい人」ではあるのですが、でも旅はやっぱりいいですね。必ず何かをもらえます。

と言いつつも、ロンドンにいることそのものが、私にとって「長~い旅の途中なのかも」と思ったりもしています。

  • REISM meets Rigna
  • REISM SELECT

PAGETOP